はじめに──「カフェイン断ち」を決意した瞬間
正直に言うと、私が「カフェイン断ちをしよう」と思ったのは、ある朝のことでした。前日の夜遅くまでパソコンに向かっていて、眠気をごまかすためにコーヒーを何杯も飲んでしまったんです。翌朝、目覚ましが鳴っても頭はガンガン、胃は重たくて、まるで二日酔いのような感覚。ベッドから起き上がるのもひと苦労でした。
そのとき、ふと気づいたんです。「あれ、自分ってカフェインに依存してないか?」と。振り返れば、朝は必ずコーヒーを飲まないと頭が回らないし、午後も眠気を飛ばすためにエナジードリンクを開ける。気がつけば、毎日300mg以上のカフェインを摂っていました(一般に、健康な成人では1日400mgまでの摂取は安全域とされていますが、感受性には個人差があります)。[1][2]
「このままじゃ、ずっとカフェインに振り回される生活になるかもしれない…」そう思った瞬間、不安と同時に小さなワクワクも生まれました。自分の体が本来持っているリズムやエネルギーを取り戻したい。そんな気持ちが強くなり、私はついに“カフェイン断ち”を決意しました。
ここでいう離脱症状(withdrawal)とは、常用している物質を急に減らす・やめることで一時的に現れる頭痛や倦怠感などの体調変化を指します。[3]
最初は「1週間だけでも試してみよう」と軽い気持ちでしたが、その後待ち受けていた離脱症状は想像以上に強烈で…正直、自分との戦いの日々の始まりでした。

初日:頭痛とだるさに襲われた衝撃のスタート
カフェイン断ちの初日は、まさに衝撃的なスタートでした。朝、いつものようにコーヒーメーカーのスイッチに手を伸ばしかけて「あ、今日は飲まないんだった」と思い出した瞬間、妙な不安感に襲われたんです。普段なら香ばしい香りに包まれて気分が上がるのに、そのルーティンがないだけで一日が始まらないような心細さを感じました。
午前中はまだ「気合で乗り切れる」と思っていましたが、昼を過ぎると頭の奥がズキズキし始めました。集中力がまったく続かず、頭は霧がかかったようにぼんやり。これは典型的な離脱症状で、12–24時間以内に出現し、20–51時間でピーク、数日続くことがあります。[3][4]
「これが噂に聞いていた離脱症状か…」と実感した瞬間、普段どれだけカフェインに頼っていたのかを思い知らされました。夕方には我慢できず横になったのですが、頭痛は収まらず、ただひたすら「耐える」しかありませんでした。

2日目:倦怠感と集中力の低下で仕事に支障が出た
2日目に入っても頭痛は続いていましたが、それ以上にきつかったのは「倦怠感」でした。朝から体が重く、まるで熱があるときのようにだるい。とにかくベッドから起き上がるのがつらくて、「ここでコーヒーを飲めば一瞬で楽になるのに…」という誘惑と、ずっと戦っていました。
仕事に取りかかっても集中力が続かないんです。普段なら30分で終わるメール処理に1時間以上かかってしまい、自分でも驚きました。画面に映る文字が頭に入らなくて、気づけばぼーっとしている。何度も深呼吸して気合を入れ直すのですが、数分後にはまた集中が切れる。その繰り返しで、効率はガタ落ちでした。
この「だるさ」「集中できない」は、カフェイン離脱でよくみられる症状です。[3][4]

3日目:眠気が加わりピンチ
3日目になると、さらに「眠気」が加わってきました。会議中に頭がカクンと落ちそうになり、慌てて姿勢を正したのですが、同僚から「昨日寝不足?」と心配されるほど。実際には睡眠時間は取っていたのに、体が常に「エネルギー切れ」のような状態でした。
正直、この頃は「カフェイン断ちなんて無理だったんじゃないか」と弱気になる瞬間が何度もありました。ただ同時に、「ここでやめたら元の生活に逆戻りだ」という意地もありました。仕事の効率が落ちることに焦りを感じながらも、自分の体をリセットするためには、この苦しさを超えなければならない。そんな葛藤を抱えた2〜3日目でした。

4日目:昼寝をしないと耐えられない強烈な眠気
4日目に入ると、これまでの頭痛や倦怠感に加えて、とにかく「眠気」が強烈になりました。朝から頭がぼんやりして、仕事のメールを開いたまま5分くらい内容を理解できずに固まっていたほどです。普段ならコーヒーを一口飲めばシャキッとするのに、その選択肢がない。頭が霞がかったような感覚にイライラしつつ、「これがカフェイン断ちの本当の試練なんだろうな」と痛感しました。
お昼を食べ終わったあとが特に地獄でした。午後1時すぎ、PCの画面を眺めていたら意識がフッと落ちて、気づいたら数分眠っていたんです。さすがに「このままじゃ仕事にならない」と思い、思い切って15分だけ昼寝をすることにしました。正直、社会人になってからデスクワークの最中に昼寝なんてしたことがなかったので、罪悪感と背徳感の両方が混じった不思議な気持ちでした。
ところが、短時間でも横になったあとは頭が少しだけスッキリして、なんとか午後を乗り切れたんです。「昼寝を取り入れる」という発想は今までなかったのですが、カフェインに頼れない分、自分の体の自然なリズムに合わせるしかないんだと学びました。
短時間の昼寝(いわゆるパワーナップ)は、状況によって覚醒度やパフォーマンスの改善に寄与しうることが示されています。[5]
ただ、夜になると「昼寝したから眠れないんじゃないか」と心配していたのですが、結果は真逆。布団に入るとすぐに眠りに落ちて、朝までほとんど目覚めずにぐっすり。4日目は「昼寝が悪いことじゃなく、むしろ必要なリセット時間なんだ」と実感した一日でした。

5日目:頭がスッキリする瞬間とイライラの波
5日目になると、不思議なことに一瞬だけ「頭が軽い!」と感じる瞬間がありました。朝起きて、窓を開けて深呼吸したとき、ここ数日まとわりついていた霧のような重さが少し晴れたような感覚があったんです。その瞬間は本当に気持ちよくて、「あ、体が少しずつカフェインなしに慣れてきているのかも」と小さな希望を持てました。
ところが、その爽快感は長く続きませんでした。仕事中にふとしたことで集中が途切れると、今度は猛烈なイライラが込み上げてきたんです。普段ならスルーできる小さなメールの文章や、同僚からの軽い指摘にまで過敏に反応してしまい、「なんでこんなことでカッとなるんだろう」と自分でも驚きました。——これも離脱でみられる症状のひとつです。[3]
特に午後、眠気と倦怠感が再び襲ってきたときは、「もうコーヒーを飲んでしまえば楽になるのに」という誘惑が頭をよぎって仕方がありませんでした。デスクの横に置いてあるマグカップを見ては「いや、ダメだ…」と心の中でブレーキを踏む。その繰り返しで、正直仕事どころではない時間もありました。
それでも夜になって布団に入ると、以前よりも入眠がスムーズで、深く眠れた感覚がありました。5日目は「体が確実に変わり始めている」という実感と、「感情の波に振り回される自分」との両方を味わった一日でした。まるでジェットコースターのように気分が上下するこの感覚こそ、カフェイン断ちの難しさなんだと痛感しました。

6日目:眠気との戦い方を見つけ始めた工夫
6日目になると、ようやく「ただ耐えるだけ」から一歩進んで、眠気との付き合い方を工夫し始めました。相変わらず午前中から頭がぼんやりして、昼食後には瞼が勝手に落ちてくるような強烈な眠気に襲われるのですが、この日は意識的に行動を変えてみたんです。
まず取り入れたのが「短い散歩」です。昼食後に10分だけ外を歩くと、驚くほど頭がリフレッシュされました。太陽の光を浴びると自然と体がシャキッとして、午後の眠気が少し和らいだんです。カフェインの代わりに「光」と「体の動き」でリセットする感覚は新鮮でした。
次に試したのが「水分補給の徹底」。眠気を感じたときに冷たい水を一気に飲むと、気分が切り替わる瞬間がありました。口の中がリセットされるだけでなく、体の奥から目が覚めるような感覚があって、これが思った以上に効果的でした。
もちろん、それでもどうしても耐えられない時は、思い切って15分の昼寝を取り入れました。以前は「昼寝なんて怠けている」と思っていたのですが、逆に午後の集中力が回復して効率が上がることに気づきました。カフェインに頼らずに仕事を進められたときの小さな達成感は、意外と大きな自信になったんです。
6日目は「眠気と戦う」のではなく「上手に付き合う」ことが大事だと実感した日でした。工夫次第で体は少しずつ順応していくんだと、前向きな気持ちを取り戻せたのが大きな収穫でした。
短時間の昼寝は、この週の後半の生産性を支えてくれました。[5]

7日目:夜の睡眠の質が大きく変わった実感
カフェイン断ちを始めて1週間。正直、ここまで来るのは簡単ではありませんでした。頭痛や倦怠感、そして何よりも強烈な眠気に振り回されて、「本当に続ける意味があるのか?」と何度も自問しました。ですが7日目の夜、ついに「やってよかった」と思える瞬間が訪れたんです。
布団に入ってから眠りに落ちるまでの時間が、驚くほど短くなっていました。以前はスマホを見ながら30分、時には1時間もダラダラしてしまうのが普通だったのに、この日は電気を消して数分でスッと眠りに落ちたんです。しかも深い眠りに入った感覚があり、夜中に何度も目が覚めることもありませんでした。
翌朝の目覚めは衝撃でした。アラームが鳴る前に自然に目が覚めて、頭が軽い。体もスッと起き上がれて、「あれ、こんなに朝って気持ちよかったっけ?」と自分でも笑ってしまうほどでした。今までカフェインで無理やり目を覚まさせていたのとは違い、体の内側からエネルギーが湧いてくるような感覚。これは本当に大きな変化でした。
もちろん仕事中に眠気がゼロになったわけではありませんが、夜の睡眠の質が改善されたことで、昼間のだるさも少しずつ和らいできたように感じます。7日目は「カフェイン断ちってこんな未来につながるんだ」と確信できた節目の日になりました。
あの絶望的だった初日の頭痛を思い返すと、本当にここまで耐えてよかったと心から思います。
カフェインは就寝6時間前の摂取でも総睡眠時間を減らすなど睡眠を妨げうることが示されており(半減期:体内濃度が半分になるまでの時間/作用が数時間続くことの比喩として用いています)、控えることで入眠や熟睡感が改善することがあります。[6]

まとめ──離脱症状を乗り越えた変化と今後の課題
1週間のカフェイン断ちは、想像以上にハードな挑戦でした。初日の頭痛とだるさから始まり、2〜3日目の倦怠感と集中力の低下、4日目以降の強烈な眠気…。正直、何度も「ここでコーヒーを飲んでしまえば楽になる」と思いました。それでも踏みとどまれたのは、「今この瞬間にカフェインを摂れば、また振り出しに戻ってしまう」という悔しさと、体をリセットしたいという小さな意地でした。
離脱症状は通常12–24時間で始まり、20–51時間でピーク、2–9日ほど続くことがあります。[3][4]
その結果、7日目には夜の睡眠が驚くほど深くなり、朝の目覚めがスッキリと変わったんです。この変化は、何よりも大きなご褒美でした。カフェインなしでも自然にエネルギーが湧いてくる感覚を体験できたことで、「自分の体は思った以上に強いんだ」と自信にもつながりました。
一方で、課題もまだ残っています。昼間の眠気は完全には消えず、仕事中のパフォーマンスをどう維持するかは今後も工夫が必要です。また、周囲のコーヒーやエナジードリンクの誘惑にどう向き合うかも大きなテーマになりそうです。
ただ、1週間を乗り越えた今は「カフェイン断ちは不可能じゃない」と胸を張って言えます。離脱症状は確かにきついですが、その先に待っている体の軽さや睡眠の質の向上は、それ以上の価値があるものでした。これからはカフェインと“上手に付き合う”方法を探りながら、自分に合ったバランスを見つけていきたいと思います。
なお、カフェインの過剰摂取は不眠や動悸、不安などの健康被害を招くおそれがあるため、摂取量の管理には注意が必要です。[7][8] 一般の健康な成人では1日400mgまでが安全域とされていますが、体質や体調、薬との相互作用、妊娠・授乳など状況により適量は変わります。[1][2]
参考文献
- European Food Safety Authority (EFSA). Scientific opinion on the safety of caffeine (2015).
- U.S. Food and Drug Administration (FDA). Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much? (2024更新).
- Sajadi-Ernazarova KR, et al. Caffeine Withdrawal. StatPearls [Internet]. (2023更新).
- Juliano LM, Griffiths RR. A critical review of caffeine withdrawal… Psychopharmacology. 2004.
- NASA Technical Reports Server (NTRS). The benefits of napping for safety(講演資料, 2019).
- Drake C, et al. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before bedtime. J Clin Sleep Med. 2013.
- 厚生労働省. 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A.
- 消費者庁. カフェインを多く含む清涼飲料水の過剰摂取に注意しましょう(2024年5月23日).